3つのサイトを売却した私が、売主と買主の両方の視点から、個人サイト売買の失敗事例と注意点をお伝えします。
サイトが、売買できることを知らない人は多いです。
しかし、サイト売却を人に勧めても「サイト売買で失敗するのが怖い」と尻込みされることがあります。
売買トラブルなど面倒な失敗を恐れる人もいます。
双方がwin-winの関係で成功するサイト売買がある一方で、サイトM&Aで、失敗する人も一定数いるのは事実です。
ここでは、個人サイトの売買を検討中の人に向けて、サイト売買で、よくある失敗例12選と失敗を防ぐ対策をまとめました。
サイト売買前に知っておけば、失敗を防げる大切な情報なので、売買が初体験の方にお伝えしたいです。
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買い手の失敗事例と注意点
買い手の1番多い失敗事例は、購入後に売上が落ちるサイトを購入してしまうことです。
質の悪いサイトを購入しないように、事前にサイト調査を念入りに行うなどの注意が必要です。
買い手の失敗事例
- 売上やPV数が購入前に売主から提示された数値と違う
- 購入後にアフェリエイト案件が停止・終了した
- ライター人件費など運営費用が予想以上にかかる
- 購入後にサイトが手動ペナルティを受けた
- Googleアルゴリズム変動でサイト順位が下がる
売上やPV数が購入前に売主から提示された数値と違う
失敗事例1
交渉時に説明されていた売上やPV数よりも、購入後の実際のPV数や売上の数字が半分以下だった。
事前に申請されていた収益が、そもそも虚偽だった、提出資料の数字が偽造されていた場合です。
例えば、提示された収益は、年間平均ではなく最高月の数値だった、情報が古く最近の売上は低下していたなどです。
対策
- 購入の意向表明後、アナリティクスの権限の付与を要求して、PV数を確認する
- 最近1年間のGoogleアナリティクスや収益情報の画面キャプチャ資料を売手に提出してもらう
丁寧に査定をおこなうサイト売買の仲介会社では、上記の資料を契約前に揃えてくれます。
アナリティクスの権限付与と収益情報の画面キャプチャ資料の提出を行わない売手は要注意です。
面倒かもしれませんが、後で失敗しないためには必要な作業なので、妥協せずに確認しましょう。
購入後にアフェリエイト案件が停止・終了した
失敗事例2
売上を出していた広告案件が停止・終了してしまった。または報酬単価が下がってしまった
売上の内訳が、1つの商材への依存度が高いサイトは、広告主が撤退すると売上が一気になくなるリスクがあります。
事前に広告主の撤退は予測できない事ですが、購入前にサイトの売上構成も注意してみる必要があります。
対策
- 複数の商材で広告展開が可能なサイトを選ぶ
- 商品名以外で集客できるキーワードが上位表示されているサイトを選ぶ
- 売り手に売上の内訳を教えてもらう
- 特単(特別単価)の引き継ぎの確認
売上の内訳は、必ず確認しましょう。
特単(特別単価)が付いているサイトも、特単の引き継ぎができない場合の売上も想定します。
複数の商材で広告展開が可能なサイトは、収益が少なくても将来性があり、相場の売上計算よりも高めに査定されている事が多いです。
それでも、特定の広告商品だけに依存する収益の多いサイトを買うよりも、こちらを買う方が良いです。
ライター人件費など運営費用が予想以上にかかる
失敗事例3
予想以上にサイトの記事更新にライター経費や労力がかかり、収益を圧迫する
専門知識がないと書けない分野や多くの更新が必要なサイトは、ライターなどの人権費がかかります。
特化や雑記サイトでも、外注に任せてしまえる方が楽です。
特に売主が自分で記事を書いて運営していた場合は、自分の労力を費用として認識していない事があります。
対策
- 収益と経費(外注費、サーバー代など)の確認を詳細にする
- 自分で更新している運営者の場合は、価格が合う外注ライターを紹介してもらう
仲介業者が間に入る場合は、売り手には自分の労力も定量化した収益・費用データの提出を求めるので、売主自身の人件費を差し引いた正しい収益は出ます。
しかし、専門性の高い記事になれば、実際に売主が見積もる金額でやれる外注が見つからない場合もあります。
可能であれば外注ライターを紹介してもらうか、無理ならば、記事更新の経費は多めに見積もっておく方が安全です。
購入後にサイトが手動ペナルティを受けた
失敗事例4
急にサイトの検索順位が下がる、Googleから「不自然な被リンク」と手動ペナルティを受けた
サイトが中古ドメインで運営されていた場合は、優良な被リンク先の数が減るなどの原因で、急に売上が下がるリスクがあります。
特に運営歴が1年未満のサイトは、要注意です。
また、売り手がSEOだけを目的とした自作自演リンクを行っていた場合もリスクが高いです。
Googleアップデート時にペナルティの対象になり、評価が下がることがあります。
対策
- Ahrefsなどのリンクチェックツールでサイトを調査する
- 中古ドメインで運用しているか?事前に確認する
- 自分で調査する力がない場合は、利害関係のない専門家に調査を依頼する
Ahrefsは有料ソフトですが、ドメイン評価の指標「DR(Domain Rating)」被リンク数やリンク先の情報などが、全て分かります。
中古ドメインで運営されていたサイトは注意が必要ですが、必ずしも悪いサイトばかりではありません。
被リンク数も多くドメインパワーが強い優良なドメインは、新規ドメインよりも早く検索上位を取りやすいです。
よって運営歴が1年以上であれば、中古ドメイン運用のサイトでも高額で取引される場合が多いです。
ただ、Ahrefsを初心者がいきなり見ても、細かい部分まではわからない場合も多いです。
そんな時は、仲介業者に相談するだけでなく、利害関係のない外部の専門家にサイト調査を依頼する方が安全です。
Googleアルゴリズム変動でサイト順位が下がる
失敗事例5
Googleのアルゴリズム変動でサイト順位が急落して、売上が激減する
Googleアルゴリズムの変動は、誰も正確に予測できません。
SEO検索に頼るサイト運営は、Googleのアップデートで順位が急落するリスクが常にあります。
特に今後は、YMYLの分野「健康」「金融」「医療」「法律」など人生の重要度の高いジャンルに関連する分野は要注意です。
今後、ますます記事に質の高さが求められることから、上位表示は難しいと予測されています。
対策
- YMYL”Your Money or Your Life”に該当するサイトの購入は避ける
- 検索順位の変動が激しいジャンルは投資回収期間を短く見積もる
今後、サイト運営はジャンル選びにさらに注意が必要です。
儲かりそうでもYMYLに該当するジャンルのサイトの購入は、特に個人は避けた方が無難です。
もし、これらのサイトを購入する場合は、短期間の回収を計画するべきです。
当然、一般のサイトよりも安く購入する交渉がおすすめです。
安く購入できないならば、絶対に止めた方が良いです。
売り手の失敗事例と注意点
売却前の主な失敗事例は、サイトの売り時を逃して売れなかった、納得できない売却額で売ったなどです。
売却後の失敗は、売上急落のクレーム、契約関係のトラブルなどの事例が多いようです。
以下、売り手の売却の失敗事例です。
売り手の売却の失敗事例
- 売り時を逃して、サイトが売れなかった
- 相場よりも安い売却額でサイトを売却した
- 譲渡後の売上急落で損害賠償や買い戻しを要求された
- 売却後に別のサイトが「競業避止義務」違反と訴えられる
- クレーマー買手に当たり、譲渡後のサポートに苦労
売り時を逃して、サイトが売れなかった
失敗事例6
価格交渉があった時に応じられずに契約に至らず、その後も売却は進まず、売り時を逃す
売れない期間も、サイトは更新を続けないと売上が落ちてしまいます。
価値が落ちると良い条件で売却するのが難しくなるので、最低限のメンテナンスは必要です。
モチベーションを保ちながら運営を続けるのは、精神的にも大変です。
対策
- 売り時は逃さずに、価格を安くしても売れるチャンスが来れば売る
- 早く売却したい時は、仲介会社の契約は専任媒介契約ではなく一般媒介契約で進める
専任媒介契約にすると、売主は他の業者に重ねて売却を依頼することが禁止されます。
よって、他社で売却のチャンスがあった時に、そちらに乗り換えることができません。
私の知り合いで、サイトの売り時を逃した人がいますが、機会ロスを売却が決まる最後まで後悔していました。
サイトは売れる時に売るのが鉄則です。
相場よりも安い売却額でサイトを売却した
失敗事例7
売買の相場がわからず、買い手の言い値で安い価格で売却を決めてしまった
サイト売買契約締結後に、激安価格で売却したとわかり、後悔するパターンが多いらしいです。
対策
- 仲介会社やプラットフォームは1社に絞らずに、何社かに問い合わせる
- どんなに激安でも、売れないよりはマシと割り切ることも大切
私も数社に査定価格を出してもらった時は、会社によって価格が100万円近い差が出ました。
価値を感じてくれる人に出会えれば、サイトは適正な価格で売れます。
ご縁を探す意味でも可能であれば、仲介会社は数社問い合わせる方が良いです。
ただ、買主が現れない限りは売れないので、欲を出さずに割り切ることも時には必要です。
激安でも早く手放すことができれば、労力はそれだけ軽くなります。
譲渡後の売上急落で損害賠償や買い戻しを要求された
失敗事例8
サイトを譲渡後に売上が急落して、買い手に損害賠償や買い戻しを請求されたが、契約書にそれらの規定を定めていなかった
サイト売却の失敗例で一番怖いのは、譲渡後の売上急落の責任を取らされることです。
正直に現状を報告して、納得して購入済みでも、契約書に責任の有無を明記していなければ、売り手側が責任を取られされるリスクはあります。
最悪、紛争や訴訟に発展する場合もあります。
対策
- 契約書に譲渡後の売り手の責任範囲を明記しておく
- 心配な場合は、弁護士などの専門家のアドバイスを受ける
仲介会社では、一般的なサイト売買の契約書の雛形は用意されています。
雛形では対応できない決め事が多い場合は、弁護士の契約書作成サービスがある仲介会社を選ぶか、個別にプロに相談するのが安心です。
売却後に別のサイトが「競業避止義務」違反と訴えられる
失敗事例9
売却後に別サイトが、買主から類似のサイトを運営していると「競業避止義務」違反と訴えられる
売主は、売却するサイトの運営ノウハウを持っているので、売却後に類似サイトを作成すると、買主の強力な競合になります。
よって競業を禁止する「競業避止義務」が規定されていることが一般的で、買手への損害が大きい場合は、紛争や訴訟になります。
対策
- 契約書の「競業避止義務」の責任範囲の取り決めをしておく
- 売却前に現在、運営中の別サイトがあれば報告しておく
売却するサイト以外に現在、運営中のサイトがあれば、売却前に申告しておく方が安心です。
また、売主と買主の双方の合意があれば、競業避止義務の設定は「基本的」に自由に設定できます。
活動を制限されたくなければ、事前に話し合って買主に譲歩してもらうなど、取り決めておきましょう。
クレーマー買手に当たり、譲渡後のサポートに苦労
失敗事例10
クレーマーの買手に当たり、譲渡後、様々な対応に追われる
例)サイトの不備を指摘され、無料の技術対応や記事作成など負担が重いサポートを強要される
サイト売買時には、買手の本当の人柄まではわからない場合も多いので、事前に見分けるのは難しいです。
運悪くクレーマーの買手に当たると、精神的にも辛いです。
基本的に相手の要望通りに対応しても、クレーマーの要求は際限がないです。
仲介会社経由で取引を行っていても、売買終了後の売り手と買い手のやり取りには、仲介会社の責任は発生しません。
あくまで自己責任で対応することが求められます。
対策
- 契約書に「売り手責任範囲」や「サポート範囲」を明記しておく
- 売却前に買い手の人柄に不安を感じるのであれば、無理に取引を進めない
- クレーマーに対しては毅然とした態度で応じる
失敗事例8や9と同様に、契約書をしっかり作成しておくことが、一番の対策になります。
また、売買に少しでも不安を感じることがあれば、曖昧にせずに解決してから契約することをおすすめします。
契約を急ぐあまり、納得しないまま相手側の要求を呑むと、ほとんどが売却後に後悔します。
また、契約書にない事までを要求される場合は、毅然とした態度で応じることも必要です。
これらの失敗も仲介会社や専門家の力を借りることで防げます。
売り手と買い手の共通の失敗事例
ここでは、売り手と買い手に共通する代表的な失敗例を紹介します。
共通の失敗事例
- サイトの移管作業(譲渡/移転)に失敗する
- 入金の問題(支払ったのに譲渡されない、譲渡したのに支払いがない)
サイトの移管作業(譲渡/移転)に失敗する
失敗事例11
経費を節約するために、サイトの移管作業(譲渡/移転)が簡単そうだったので自分で行う。
移管に失敗してサイトが非公開になると、PVが下がりサイトの価値が落ちた。
サイト移管に失敗すると、取引自体がキャンセルになる、不備のあるサイトを購入するなどの損害が発生します。
一時的に非公開になるだけでなく、最悪の場合はデータが消失、復元できないと双方、大きな損害になります。
対策
- 知識や経験がない場合は、移管作業は仲介業者やサイト引っ越し業者への依頼する
- 移管作業が終了しても、元データは1ヶ月ほどはサーバーに保存する
後のリスクを考えれば、自信がない人は、サイトの移管作業はプロに依頼する方が安全です。
移管作業は、1ヶ月ほど技術サポートを行ってくれる業者を選ぶと安心です。
念のために移行するデータも1ヶ月間は、元のサーバーに残して置いてもらうように頼みましょう。
入金の問題が起こる
失敗事例12
代金支払ったのにサイトが売り手から譲渡されない、
サイトの移管作業が終了したのに買い手から支払いがない
相手と音信不通になり、損をしてしまう失敗も個人間の取引では起こります。
対策
- 買主の個人情報確認を必ず行う
- エスクローサービスを利用する
- 仲介業者を利用する
エスクローサービスは、第三者が介在し、代金と商品の安全な交換を保証することです。
【エスクローサービスの流れ】
サイト売買以外にも、メルカリなどのマッチングサイトでも、一般に普及している仕組みです。
できれば、エスクローサービスを利用して取引を行いましょう。
直接取引の場合でも、プラットフォームによってはエスクローサービスだけを利用できる会社もあります。
サイト売買のほとんどの失敗は避けられる
以上、サイトの失敗事例を紹介しましたが、事前に注意すれば避けられる失敗がほとんどです。
注意点
- 契約書を細部までしっかり作成する
- 仲介会社や専門家などプロの力を借りる
- 事前にサイト調査をしっかり行う、
- 資料は全て正直に提示する
サイト売買には、事前準備が大切です。
しっかりと情報を仕入れて、失敗しない売買を行ってください。